折り屋根の家 2017. 09

つくば市の中心部にほど近い住宅地、南側は公園通りに、北側は幅員6mの道路に面する南北に細長い敷地に建つ、3世代と大型犬のための住まいです。南西側に4階建てのマンションが建つ環境での太陽光パネルの設置と性能の担保、ロフトを含む収納力の確保、暑さが苦手な大型犬の居場所をつくること、丸見えにならない駐車場を設け、かつ犬が逃げないようにフェンスをめぐらすことがプランニング上の課題であり、あわせて40坪程度の床面積を確保しながら建設費を圧縮することが求められました。

具体的な課題の解決策は、太陽光パネルの設置位置をなるべく北側にし、かつ発電能力に適した屋根勾配とする、各部屋に収納を設けた上で、ロフト空間をつくる、リビングダイニングとつなげることもできる風通しの良い吹き抜けの土間リビングを犬の居場所とする、カーポートを建物わきに確保し、高さ1.4mのフェンスで境界線を囲うことにしたことなどです。

建設費の削減は、露出する構造材を減らして加工費を抑え、軒裏を構造用合板のあらわしにし、サイディングやクロスなどの一般的な仕上げ材を採用すること、そして何よりもCM方式として現場経費を圧縮することで達成しました。その一方で床板にはムク材を使って肌触りと調湿性能を担保することで、自然素材のあたたかさも兼ね備えた住まいとしました。

いくつかの勾配屋根が連続する折り屋根の家は、2階南側の寝室の高さを抑えて落ち着きのある部屋とすること、太陽光パネルの設置勾配を確保しながらロフトを設けること、北側玄関まわりの壁の高さを控えめにして圧迫感のないたたずまいを両立することから生まれました。一般的な仕上げ材や既製品を用いながら、他方製作階段やガラスの手すり壁、大工さんによる造作家具などを合わせることで、シンプルな中にも個性のある、住まいができあがりました。

宮本建築さんの一切妥協のない仕事ぶりも、できあがった空間のやさしさにつながっています。