これからの大工さんのこと

 

 昨年(2015)の国勢調査の結果かどうかわかりませんが、2015年の大工人口が30万人程度であり、昨年大工に就業した人数もわずか千人程度であるといううわさを聞きました。それが本当なら95年以降は5年ごとに10万人ずつ大工人口が減っているということになります(上図)。それに加えて深刻なのは、次代を担う40歳未満の若手の大工さんがとても少ないことと、グラフからは読み取れませんが、熟練技術を習得する仕事の機会が失われつつあることです。 

 グラフから大工人口に反比例して木造住宅のプレカット率が上昇していることがわかりますが、人口減少の原因はプレカットの普及による技術発揮の場の減少だけではなく、住宅メーカーで求められる仕事の質やスピードとモチベーションや体力の関係、技量や経験に比例しない賃金体系、次々に変化する法律のしばり、木造住宅の現代化への対応の困難さなどが考えられます。それらをひとことで言いかえると、木造住宅をつくる主体が変化していること、また大工さんの棟梁(とうりょう)としての総合力を積極的に育成、評価してこなかったことによる社会的な位置づけのあいまいさであると言えるように思います。

 我々は、長い間木を扱ってきた知恵や技術を次代に受け伝えていくために、わずかでも力になりたいと思っています。大工さんが技術を発揮できる場を確保すること、大工さんが前向きな気持ちで仕事ができるような環境を整えることを心がけていきたいと考えます。

「顔の見える家づくり」には大工さんが欠かせません。満足のできる住まいをつくるために、まだまだ大工さんには元気で頑張ってもらわなければならないのです。

 ※1970, 75, 80年のグラフでは、60~69歳と70歳以上の人口を、60歳以上でまとめて示しています。