本計画は幼稚園型認定こども園の改築工事です。改築工事とは、従前と同じ用途で同等な構造・規模の建物を新たにつくり直すことで、老朽化した既存建物を解体撤去して新しく建物をつくるので、敷地全体からみれば改築、工事としては解体+新築になります。
既存園舎は、旧耐震時代に建てられた職員室などの管理部門を含む木造2階建ての幼稚園部分と、平成25年に竣工した鉄骨造2階建てで耐火建築物の保育園部分とから成っており、保育園部分を残しながら幼稚園部分を建て替えるというプログラムです。既存園舎の構成は消防法では建物間にわずかなスキマがあるので別棟扱いでしたが、そのため接続部分は雨が入りやすいつくりでもありました。
計画に際しては、改築する幼稚園部分をどうつくるかと、既存建物とどうつなげるかが焦点になりました。木造でつくりたいという要望を前提にする場合、新しくつくる幼稚園部分を木造耐火建築物にするとかなり高価になってしまう、現状の延長で別棟にすると棟間の移動の際に夏暑く冬寒い外気に触れることになる、木造の建物をそのままつなげると耐火建築物である既存部分も非耐火として扱われて法的に不適合となってしまうなど、既存部分の耐火建築物を担保しながら、新たにつくる木造部分のコストを抑える方向性が求められました。そこで、残す建物と新築部分の間に奥行が3m以上の耐火建築物を挟めば、新築部分の構造がフリーになる、いわゆる別棟通達を使う方向で計画することにしました。(計画当時は60分の耐火構造でしたが、その後の法改正でより厳しい90分の耐火性能が求められることになりました。)ただし、新築部分の耐火性能を自由にするには、建物の2階には子どもが使う保育室をつくらず、職員室などの大人だけが使う部屋を配するという制約が出てきます。また、間に挟んだ耐火構造部分からも単独で避難ができるように、そこにも階段を設けています。
全体配置については敷地の大きさに限りがあるので既存の構成を踏襲したL型平面とし、東側の端にあった遊戯室をL型平面の中央角に配し、玄関近くかつ既存部分からもアクセスしやすい位置としました。保育室と事務室を園庭に向かって南面させつつ、北道路側に駐車場をこれまで以上の台数を確保しました。各定員によって異なる保育室の面積は、トラスのピッチを変えることで柔軟に対応し、保育室の空間は設備機器を仕込む園児のスケールに合わせた高さの低い平天井部分と、屋根型をあらわす大らかな勾配天井の組合せで構成しました。事務室内の階段から2階の職員室や会議室にアクセスするのも既存園舎と同じ形ですが、その先にある遊戯室2階のキャットウォークは、イベント時の観覧場所にもなるし、隣接する耐火構造部にある階段からもアプローチできるので避難も容易です。
また北側の民家への陽当たりに配慮し、遊戯室部分は高さを抑えた断面計画としました。
遊戯室や保育室は木造らしさを表現すべくトラス架構をあらわしとし、雨天時でも北側の駐車場からのアクセスを担保する深い庇は、タルキ・野地板あらわしとして、玄関まわりのうろこ張りの板壁とともに、まちに開こうとする、親しみと温かみのある佇まいを演出しています。 TSD+との共同設計 構造設計:KMC(蒲池健) 写真:中山保寛